大学独自の努力

英語話す力、独自に測定 

東京外大、英機関と連携し入試に 京都工繊大、説得する力など評価 

 

日経です。

 

 2020年度に始まる大学入学共通テストの英語への民間試験導入が議論を呼ぶ中、英語の「話す」力を測るテストを大学が独自に開発する動きが出ている。東京外国語大と京都工芸繊維大が進めており、入試や教育上の目的にかなった内容を検討中だ。大学にふさわしいテストの形を探る試みともいえ、英語入試改革を考えるうえで参考になりそうだ。

京都工繊大では1年生全員がスピーキングテストを受ける(昨年12月)

京都工繊大では1年生全員がスピーキングテストを受ける(昨年12月)

 東外大は19年度新設予定の国際日本学部(定員75人)の入試で、英語を話す試験(スピーキングテスト)の導入を決めた。20年度には全学部の入試に広げる方針。英国の国際文化交流機関ブリティッシュ・カウンシル(BC)が提供し、世界で年35万人が受験するテスト「Aptis(アプティス)」を土台にBCと共同で問題をつくる。

 「世界の中の日本を学ぶ」ことを目的とする同学部。学生の4割は留学生だ。話す試験を先行導入するのは「英語の授業もあり、入学当初から英語で発信する力が必要なため」(林佳世子副学長)だという。

 測りたいのは学問に使える英語力。「(読む、聞く、書くの)3技能の問題作成には自信がある」(同)ため、「話す」を含む4技能がセットになった既存の試験をそのまま使うことは考えなかった。言語、文化といった学問分野に関心や適性がある学生を選抜する問題にしたいという狙いもあり、話す試験だけを切り出せて問題のカスタマイズもできるアプティスに着目した。

 話す試験を課すことで「高校の授業を変えたい」との思いもある。「東外大を目指す学生は物おじしないはず。導入しても受験生に敬遠されるリスクの小さい我々が始めるべきだ」(同)と判断した。BCと開発したテストを他大学が使える仕組みも構想中だ。

 工科系の京都工芸繊維大は12年度に開発を始めた。学生の7割強が大学院に進み、修了後はメーカーなどへ就職する。アジア諸国の工場で管理者などとして働く卒業生も増えており、英語を話す力の育成が課題だった。

 このため、テストは文法や発音の正確さよりも「他者を説得する」「問題の解決法を見いだす」といったタスクの達成度などを評価する。英語を母語とする人(ネーティブ)の英語にどの程度近づけているかを測る性格が強い民間の検定・資格試験などとは一線を画したという。

 問題文のふき込みや採点の担当者にはネーティブ、非ネーティブの双方を採用。母語が異なる人同士をつなぐ共通語としての英語の力を測ることも重視する。

 目標は大学院入試への導入。学部入試での活用も視野に置く。14年度からは学部1年生全員に受験させ、点数を一部、成績に反映させている。

 大学が開発した話す試験の先駆けとなったのが「TEAP」だ。上智大が日本英語検定協会と14年度に共同開発。主に日本の高校3年生を対象にした4技能のテストで、「大学教育レベルにふさわしい英語力」を測ることを目的とした。17年度には約120大学が入試に活用し、年間2万5千人前後が受けるなど広がりを見せる。

 大学入学共通テストでは実用英語技能検定(英検)やTOEICなど7種類の検定・資格試験の導入が決まった。民間試験は4技能を評価できる半面、「学習指導要領と対応していない」「異なるテスト間での点数換算が難しい」などの課題が指摘され、高校・大学関係者の懸念は強い。

 いうまでもなく入試の運営主体は大学だ。個別試験での4技能の扱いについても議論を深めていく必要があるだろう。