
昨年12月に刊行され、5月1日現在Amazonランキングで11位です。
脳科学および心理学の最近の知見をまとめた好著です。
備忘録的に何回かに分けて、まとめていきたいと思います。
最初に「エビングハウスの忘却曲線」についてです。
教育に携わる方ならこの言葉を必ず聞いたことがあるはずです。

しかし、この結果はどのような実験から生まれたかを説明している文章を見たことがありません。この本では以下のように言っています。「エビングハウスが生みだした解明方法とは、無意味な音節の一覧を作るというものだった。その一覧には、母音を子音で挟んでできる単音節がいくつも含まれていた。RUR、HAL、MEK、BES、SOK、DUS、という具合だ。意味のある言葉はほとんど含まれていない。 エビングハウスは、自身が記憶するものの「一群」を見いだしたのだ。 彼は約2300の音節を作った。ありとあらゆる音節、少なくとも彼が思いつくだけの音節をリストアップしたのだ。そして、7〜36個ずつのグループに無作為に分け、グループごとに一覧表を作った。それから、1グループずつ覚えた。音節を読みあげ、メトロノームを使って一定の速度を保ち、確認テストで満点をとるまでに繰り返した音読の回数を記録した。」
つまり無意味な言葉を機械的に暗記させる実験から導かれた結果だったのです。
私たちが学習して覚える事柄と条件が違うことに注意してください。
さらにこの実験は19世紀(1880年代)に行われたという事実です。
21世紀に生きている我々が「エビングハウスの忘却曲線」について学ぶことができる一点は
意味の連関を持たない暗記はすぐに忘れてしまうという事実だけです。
もしこの曲線を使って記憶のメカニズムを説明している本や文章があったら、ほぼ科学的ではないものだと思って差し支えありません。つまり知らないまま引用している可能性があります。
現在の脳科学の知見では、人間は忘れるのではなく思い出せないだけであり、「脳内の記憶は、徐々に消え去ってなくなるという意味で「失われる」ことは絶対にないのだ。失われるのではなく、一時的に引きだすことができないだけで、記憶の「検索する力」が低いかゼロに近い状態だということだ」と述べています。
この項は続きます。
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