京都大学学長のお言葉

日経です。

  「拙速なロードマップは避けるべきだ」

あいさつする安西座長(左)(3月25日、文科省)

 

 3月16日、東京・竹橋で開かれた国立大学協会の総会後の記者会見。京都大学の山極寿一学長が「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の2020年度導入に異を唱えた。

 

課題残ったまま

 

 大学入試センター試験に代わる学力評価テストは、マークシート式とは別に記述式を導入する。だが誰が採点し、公平性をどう担保するのか――。同25日の文部科学省の有識者会議の最終報告でも、50万人を超えるセンター試験と同規模の受験者を想定する記述式の課題は残ったまま。「脱一発勝負」を狙った学力評価テストの複数回実施は高校の授業などへの影響から当面見送られた。

 山極学長の発言は、国が進める改革内容を冷ややかに見る国立大の多数意見を代弁する。

 東京大や京大は2次試験ですでに高難度の記述式を実施。新たに推薦やAO(アドミッション・オフィス)入試も始めており、独自に改革を進めているという自負がある。だが文科省の幹部は「日本の教育全体を考えてほしい」と、国の改革に“抵抗”を示す有力大に不快感を隠さない。

 子供たちを大学に送り出す側はどうか。「抜本的な改革とはいえず、物足りない」。2月に英国の財団から世界の優れた教師10人に選ばれた工学院大付属中・高(東京都八王子市)の高橋一也教諭は最終報告に落胆する。

 グローバル社会を生き抜く力を育むため、理科や数学を英語で教え、コミュニケーション能力を鍛えるグループ学習を重視する。高橋氏の授業は、次代の学びへの挑戦だ。入試改革が高校の教育を変えるきっかけになる。期待していただけに「センター試験から代わり映えしない程度では、海外からますます置き去りにされる」と懸念を強める。

 思考力や表現力などを問う新しい入試の具体像は見えない。それでも中学や高校の一部は少子化時代の生き残りを懸け、走り出す。

 

原石を発掘する

 

 

 共立女子中(東京・千代田)は今春の一部入試で、理科と社会を合わせた問題を記述式で解答させる「合科型論述テスト」と、個別面接を初めて行った。児島博之校長は「知識偏重を見直す大学入試改革を見据え、伸びしろのある原石を見いだしたかった」と語る。

 都内のある大手進学塾は16年度からアクティブ・ラーニング(能動的な学習)を取り入れた講座を設置。グループディスカッションやグループワークを取り入れた課題解決型の授業を始める。

 「大学や高校は大衆化、多様化し、全て同じように教育する時代は終わった」。有識者会議に参加したニチレイの浦野光人相談役の考えは、多くの関係者が共有する。問題はどのような入試で新たな教育を実現するかだ。

 「課題があるからといって改革しなければ、子供たちの未来はない」。会議の座長を務めた安西祐一郎・日本学術振興会理事長は繰り返す。

 学力評価テストの実施まで4年。難題の「最適解」を導き出すために残された時間は決して多くない。

 

どう考えても文科省に分が悪い状況です。