教育改革についてー業界過去情報

日経の4月7日です。


教育サービス業界が転機を迎えている。2020年度に「大学入試センター試験」が廃止され、知識の活用力を問う試験に変わる。大学は入学者に求める能力を明確に示し、小論文や面接、高校の成績などを加味した総合評価で合否を決める。学習塾や予備校は多様化する受験生の要望に応えられるのか。

河合塾は環境をテーマに英語と小論文を学ぶ講座を開いた(東京都新宿区)
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河合塾は環境をテーマに英語と小論文を学ぶ講座を開いた(東京都新宿区)

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 2月中旬、河合塾の新宿校(東京・新宿)の一室に英語講師3人と小論文講師、高校2年生13人が集まった。

 「気温の上昇と二酸化炭素(CO2)濃度の上昇は本当に関係があるの」。講師の問いかけに、生徒たちは2枚のグラフをにらみながら話し合う。「年代によって濃度が上昇するほど温度が上がっていない」「では結論を短い英作文にしよう」

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 教育サービス業界では教科横断も異例ならグループワーク方式の講座も珍しい。2日間で受講料は2000円。少人数に多くの講師を割いた今回は採算に合わないが、照準を合わせるのはセンター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)だ。

 新テストでは教科を組み合わせて知識を活用する力を問う出題になる。「講座の運営方法や模試の内容も見直すことになる」(河合塾幹部)。受験生が1点を競うことで成立していた模試や偏差値も、意味が薄れることに危機感を示す。

 大学は競争力を高めるため入試改革で独自色を出そうと必死だ。獲得したい学生像を示し、教科の学力以外の要素も選抜の材料にする。16年度に始める東京大学の推薦入試では一部の学部が具体例として科学オリンピックの成績提出を求める。愛媛大学は16年度の新設を目指す「社会共創学部」(仮称)の入学願書に、部活動などの活動歴を記入する欄を設ける。

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 新たな選抜方法にどう対応するか。矢面に立つはずの高校は一部の進学校を除き戸惑いから足踏みを続ける。一方で、学習塾や予備校は手探りのまま一斉に走り始めた。

 ナガセは昨年末、人物像を重視するAO入試で実績のある学習塾を買収。通信教育「Z会」の増進会出版社(静岡県長泉町)は4月から国内外の難関大学を目指す新講座を始めた。リクルートホールディングスなどIT(情報技術)を駆使した新規参入組も出現した。入試改革を前に「どこが抜け出すか競争が始まっている」(ナガセの永瀬昭幸社長)。

 18歳の受験人口が減り市場縮小は確実だが、「今は学習支援システム構築など投資を続ける時期」(河合塾幹部)。3月末で老舗予備校の代々木ゼミナールが全国の校舎を大量閉鎖するなど、業界地図は変わりつつある。