教育改革について(3)に続いて、新テストについて述べさせていただきます。
昨年末の中教審の答申を受けて、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」と
「高等学校基礎学力テスト(仮称)」の2種類の名称のテストが実施されるようです。
学力評価テスト(発展型と呼ばれていたもの)は国公立上位大学の一次試験のための用途となり、現行のセンター試験の替わりとなるのに対し、
基礎学力テスト(基礎型と呼ばれていたもの)は
◎高卒認定試験(以前の大検)の代替
◎私立大学(一部国公立大学)のAO入試、推薦入試でのスコア提出
◎私立下位大学の一般入試
などの用途に利用される模様です。
誤解を恐れず言ってしまえば、
基礎学力テスト→高卒認定試験をイメージした知識確認型の試験または現行セン
ター試験の2単位教科の難易レベル
(高認試験の合格率は40%ですから、かなりいい線です。)
学力評価テスト→現在の国立大学の推薦・AO試験で「小論文」として出題されて
いる問題+現行センター試験4単位教科の難易レベル
基礎学力テストは現行のマークシート問題と変わりはありませんが、学力評価テストは「教科型」に加えて、「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題すると述べられているため、来年のテストサンプルが出てくるまで、予想がつきにくい状態です。また「総合型」の中にアメリカのSATやACTのような論理性を問う問題も含ませる可能性が高いと睨んでいます。
学力評価テストの「合教科・科目型」「総合型」の中に英語が混じる可能性は少ないと思います。英語は初期の段階からTOEFL(iBT)で決まっている感じです。よく、英語求められる4技能もTOEFL導入で計測できます。また、もともとTOEFLのスピーキングは日本人が不得意なので、従来通りのTOEFL戦略をすすめながら、TOEFL対策としてスピーキングを勉強してもそこそこのスコアはとれるでしょう。
(ただし、高校がどのように指導できるかは関知していません。)
以上から問題となることが、2点あります。
①学力評価テストが受験条件となる大学はどのレベルか?
基礎学力テストは大学入試の利用としてはAO・推薦入試のためだけなのか?
中教審の答申を読む限りでは大学を上位・中位・下位と分類し、上位・中位の大学は学力評価テスト、AO・推薦入試が主体の下位大学(BF大学)は基礎学力テストのスコアを義務付けようとしていますが、AO・推薦入試での入学者が半数を超えた現在、中教審の目論見はやや難しくなっていると考えられます。特に、中堅高校(推薦と一般受験の両方の可能性がある高校)では2種類のテストを受ける必要性があり、負担が大きくなるのは必至です。
私見ですが、現状では学力評価テストで選別して意味があるのは旧帝大レベルではないかと考えられます。旧二期校以下のレベルでは現在の二次試験の小論文や総合試験の記述が(受験者が皆できないという意味で)セレクションの機能を果たしていないのではないかと想像されます。この疑問を払拭するには高校の大胆なカリキュラム編成の改変と先生たちの論述の指導力が重要ですが、文科省が許せば、基礎学力テストの結果も加味していく可能性も否定できません。旧二期校以下の国公立と、関東で言えば日東駒専以下の私立は、入学定員の半数近くを基礎学力テストの結果でセレクションするのではないかと想像します。
②学力評価テスト・基礎学力テストともに教科の設定が全く不明であり、科目履修の有利不利などの問題とどう関係するかがわからない。
多分この問題をクリアにするために、学力評価テストでは文系用の「合教科・科目型」と理系用の「合教科・科目型」しか作れないのではと思われます。前提として全ての知識を与えて、論述力を中心とした採点をすることになるでしょう。理系でいえば全ての知識が書いてある生物の考察問題のイメージです。文系では一般的な社会問題(少子高齢化、いじめ、環境問題など)をデータや意見・論点を述べた文章をベースに論述する小論文の問題です。この他に大学での専門教育を先取りしたような経済学の問題も考えられます。
基礎学力テストでは、文科省は選択教科を多くさせようとするでしょうが、私立であれば3教科(英国社か英数哩)に落ち着くのではないでしょうか。
まとめると基礎学力テストはほぼ問題なく受け入れられると想像できるが、学力評価テストは大学の意向にも左右され、混乱が起きることは決定的です。
補論:上記の文章を読むと、今回の大学入試改革を非難しているように感じられるかもしれませんが、私は大歓迎です。知識ベースではない、論理的思考を問われる試験でしたら、高等学校の現場がかわり、一斉授業の形態がなくなっていくと思われます。明治以来の教育の変革が始まるかもしれません。
付け足しですが今回の入試改革でかわるのは文系です。理系は多分大きく変化しないと思います。
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